アセナピン(シクレスト)【舌下錠だが糖尿病でも使える抗精神病薬MARTA、精神科医が6.5分でまとめ】

アセナピン(シクレスト)【舌下錠だが糖尿病でも使える抗精神病薬MARTA、精神科医が6.5分でまとめ】

0:05 はじめに
0:29 アセナピン(シクレスト)の概略と躁うつ病・気分安定薬
2:47 アセナピン(シクレスト)の立ち位置・長所・短所等
5:12 アセナピン(シクレスト)の実際の使い方
5:52 まとめ

アセナピン(シクレスト)は、情動安定に強い、統合失調症に使う抗精神病薬MARTAの1つで、体重増加など副作用も少なく糖尿病でも使えます。ただし「舌下錠」でしびれが出る等あり、その点には慣れる必要がある薬です。
精神科医が要点を約8分の動画にまとめています。
出演:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)

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↓↓内容の詳細は下記になります。

<はじめに:抗精神病薬アセナピン(シクレスト)>
心療内科精神科の薬。今回はアセナピン(シクレスト)についてみていきたいと思います。よろしくお願いします。
この心療内科、精神科の薬の動画では、メンタルヘルス分野の様々なお薬に関してご紹介をしています。今回は統合失調症に使う抗精神病薬の一つでありますアセナピン(シクレスト)について見ていきたいと思います。

<アセナピン(シクレスト)・統合失調症について>
まず、このアセナピン(シクレスト)とはということですけれども、これは統合失調症に使う抗精神病薬「MARTA」の一つになります。
糖尿病があっても使うことができまして、気分の波を抑える作用も期待するものになります。
種類として、舌下錠といって舌の下で溶かす薬になりまして、使い方やしびれというところに注意が必要なものになります。

では、統合失調症とはを見ていきますけれども、これは悪化したときに混乱や幻聴・妄想が目立つ脳の不調になります。
主に脳のドーパミンの作用が過剰になることが背景とされます。
治療はドーパミンの作用を抑えるなどします「抗精神病薬」を継続することが基本になります。

<抗精神病薬の種類と、その中での「MARTA」について>
抗精神病薬ですけれども、主には脳のドーパミンの作用などを抑えて統合失調症の改善を図る薬になります。
改善をするほかに、再発予防・再燃予防の意味もありまして続ける必要があります。
効く場所によって大まかに以下に紹介します3種類に分かれます。

(この)3種類を見ていきますけれども、方にはドーパミン系に効く薬、SDAという薬、ドーパミン・セロトニンに効く薬。あとはMARTAと言う薬、いろんなところに効く薬があります。
まず、ドーパミン系に関しては、主に幻覚や妄想に対しては効果を期待することが多いです。逆に副作用としては、いわゆるパーキンソン症状として歩きづらくなったり、ろれつが回らなくなるという副作用を警戒する必要があります。
一方、MARTAの方を見ていきますと、これは感情・気分の波などに強い作用を期待するものになります。先ほどのパーキンソン症状は少ないんですけれども、一方で食欲が増えたり、体重・血糖値が増えるという副作用が比較的出やすいので注意が必要であります。
SDAに対しては、大体この中間になりまして、プロラクチンというホルモンを増やす副作用が出ることがあります。
この中で、アセナピン(シクレスト)はMARTAというところに分類されるものになります。

ではこの「MARTAとは」ということですけれども、これはドーパミン・セロトニンという物質のほか、さまざまな脳内物質の調整をするという薬になります。
症状の中でも、特に感情不安定に対して感情を安定させるという効果を期待するものであります。
いわゆる「パーキンソン症状」歩きづらくなるなどは少ないんですけど、一方で代謝系と言われて、血糖値や体重の増加などに注意が必要なものになります。

<アセナピン(シクレスト)の立ち位置・長所と短所・副作用>
この中でアセナピン(シクレスト)の立ち位置としては、糖尿病でも使うことができるMARTAというふうに言えるかと思います。

アセナピン(シクレスト)の長所から見ていきますと、まずは情動・感情面への対策・改善を見込んでいくところになります。
その中で、糖尿病でも使うことができまして、体重増加もあまり気にならないというところあります。
そこも含めて全般的にあまり強い副作用は目立ちにくいというのも長所になります。

一方、アセナピン(シクレスト)の短所ですけれども、まずは「舌下錠」というちょっと飲み方が特殊というところがあって、飲みにくさであったり、飲む時の不快感というところに注意が必要です。
2つ目は、原則としては1日2回使う必要があるというところ。あとは効果に個人差があるというところになります。

このアセナピンの副作用ですけれども、副作用自体は全般的にあまり多くはないです。
例としてはパーキンソン症状は0ではないですけども、基本的には少ないものになります。
眠気や倦怠感は人によっては出ますけれども、他の薬と比べてそんなに多いわけじゃないというところ。
あとは体重増加ですけれども、これも他のMARTAと比べると少ないというところがあります。

<注意:アセナピン(シクレスト)は舌下錠>
ここで注意点、やはりアセナピンは「舌下錠」という種類であるということです。
これは舌の下で溶かすという使い方をします。これを飲んでしまうとほとんど効かないということがありますので、舌へ溶かして10分間や水も含めて飲食はしたらいけませんという薬になります。

舌下に伴う不快感等というところを見ていきますと、まず1つ目としては舌がしびれた感じになるんですね。個人差がかなりあるんですけど、人によってはちょっと数十分続く場合があります。ただ、これは改善するものになります。
あと、他の薬を一緒に飲んでいる場合は、まず他の薬から飲んで、その後、このアセナピンを舌下で服用するという2段階にする必要が出てきます。
舌下というちょっと違和感のある状態で10分ほど待つ必要があるというのがもう一つの弱点になってきます。

<アセナピン(シクレスト)を検討する場面>
という中で、アセナピン(シクレスト)を検討していく場面ですけれども、まず1つ目は感情や気分の不安定が目立つという方に対しては適応になるかと思います。
特にそうした中でも糖尿病があったり、もしくは体重増加が気になるという時には非常に適応になるかと思います。
あとは、他の薬をあまり使わない・いわゆる単剤ということであれば、舌下錠という薬はやや気になりにくいところがあるかと思います。

<実際のアセナピン(シクレスト)の使い方>
実際のアセナピン(シクレスト)の使い方ですけども、一回5ミリ1日2回、時には5ミリ1日一回だけということで開始をしていきます。
不十分であれば、だんだん増やしていって、1日20ミリ・10ミリ✕2というところまで増やしていきます。
副作用や違和感などが強ければ、薬を変えたり、減薬・減らすことを検討していきます。

最大量20ミリでも不十分であれば、薬を変える・変薬などを検討していきます。
そして、安定した後も、再燃予防という点から維持量を継続していきます。
その際は1日2回だったんですけれども、1日1回へ変えるということも慎重に検討していくことになるかと思います。

<まとめ>
今回はアセナピン(シクレスト)について見ていきました。
このアセナピン(シクレスト)は、気分の安定に強いタイプの抗精神病薬「MARTA」の一つでありまして、その中でも、糖尿病でも使うことが可能なものになります。
これは舌の下で溶かす「舌下錠」ということになりまして、それに関する不快感は気になるところですけれども、副作用に関しては血糖値も含めて一般的には少ないとされます。
そのため、長期に服用することに関しては、不快感さえ気にならなければ比較的やりやすい面がある薬かと思います。

こころ診療所グループ(医療法人社団Heart Station)
府中こころ診療所(東京都府中市宮西町1-1-3三和ビル2階、☎042-319-7887)
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【解説者】
医療法人社団Heart Station 理事長 府中こころ診療所院長 春日雄一郎
精神科医(精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医)
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。

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