夫の糖尿病に合わせ15年食事を作った私へ「料理なんて誰でもできる」と言われた。私は栄養指導の記録を病院へ持って行った――翌朝、管理栄養士が数字を示すと夫は箸を置いた

夫の糖尿病に合わせ15年食事を作った私へ「料理なんて誰でもできる」と言われた。私は栄養指導の記録を病院へ持って行った――翌朝、管理栄養士が数字を示すと夫は箸を置いた

「料理なんて誰でもできるだろ」

糖尿病と診断された夫・正志のために、十五年間、毎日の食事を整えてきた春子。

ご飯の量を量り、食品表示を確認し、外食した翌日は献立を調整する。
栄養指導にも付き添い、体重や食事の記録も欠かさず残してきました。

それは春子にとって、特別なことではありませんでした。
夫婦なら当然。
家族なら支えて当たり前。

そう思っていたからです。

ところが退職した正志は、
「これからは好きなものを食べたい」
「十五年も同じことをしているだけ」
と、春子が積み重ねてきた時間を簡単な一言で片づけてしまいます。

さらに、

「数値が良くなったのは薬のおかげだろ」

そう言われた春子の胸に残ったのは、怒りよりも深い虚しさでした。

その夜、春子は食器棚の奥から、十五年間捨てずに保管していた青いファイルを取り出します。

そこに残されていたのは、
過去の栄養指導票、
食事の記録、
体重の変化、
外食の回数、
そして古いお薬手帳のコピー。

一枚ずつ日付を確認していくうちに、春子はある違和感に気づきます。

夫が「薬のおかげ」と記憶していた時期。
しかし、薬の内容は長い期間ほとんど変わっていないように見えたのです。

では、正志の体重と数値が大きく変化したあの時期に、本当に変わっていたものは何だったのでしょうか。

そして翌日の栄養相談で、十五年前から残る病院の記録と春子のファイルが並べられることになります。

夫が覚えていた十五年間と、
記録に残されていた十五年間。

その二つは、本当に同じものだったのでしょうか――。

長年、夫や家族を支えてきた方ほど、
「家族だから当然」
として誰にも気づかれない役割を背負っていることがあります。

これは、夫の健康を十五年間支えてきた一人の妻が、自分のしてきたことの意味と、これからの夫婦の距離を見つめ直していく物語です。

最後までゆっくりお聴きいただけましたら幸いです。

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